一級建築士資格独学散歩道

一級建築士資格取得までの道のりを散文的に綴ります。

8.製図手順の効率化と道具の活用で時間短縮できるのか

 いよいよ来週の日曜日が一級建築士製図試験日である。しかし、今年の学科試験に落ちた小生は、余裕で製図試験のトレースを続けているのである。つまり、来年の今頃は自宅で模擬試験的に時間を区切って製図試験の準備をしているはずなのだ。
 ところが、これまでに6枚のトレースを終えたが、やはり時間は8時間ほどかかってしまう。  

 自転車に乗るように、脊髄反射的に図面が書けるようになるまでは、まだまだ時間がかかりそうなのだ。それでも少しずつではあるが、図面を書く時間が短縮されていることを実感できる。つまり、どこで時間が短縮できるか、どうやって時間を短縮できるかが何とはなしに分かってくるのだ。

 時間短縮の要素は主に3つに分けることができる。
 
1.手順の単一化
 手順の単一化は、描画時間短縮にもっとも効果をもたらすと思われる。中でも、考える手順の定着はおそらく最も大きな効果をもたらすだろう。
 最初に敷地図を描く。実際の試験では、あらかじめ製図用紙に敷地が描かれているらしい。しかし、練習用紙に敷地図は描かれていないので、自分で描くことになる。その右側に2F、基準階がある場合はその階の平面を割り付ける。寸法線を描く側は、少なくとも4升分(2㎝以上)を開ける必要がある。割付が完了したら、柱芯と柱を描く。ここまではほとんどの人が共通の手順を踏んでいるはずだ。問題は、この後である。
 平面図は1階分ずつ完成させるのではなく、各階のコアを最初に描く。つまり、すべての階の階段およびエレベータ周りを先に描くことだ。こうする事で、上下階の位置関係が明確になる。
 この後に、部屋割りとなる壁芯の補助線を引く。壁面は便所から書き上げて全体の部屋割りを完成させる。ここで時間がかかるのは、壁と壁の接合部の空きを作ることだ。接合部の空きを、壁を描く段階で開けておくべきか、あるいは壁を通しで描いてから接合部を字消し板を使って消すのか。実際に、最初に描いてた壁面線の接合部分を字消し版で消してみたが、はっきり言ってこれは至難の業である。やはり最初から接合部の空きを考慮して描いたほうが良いようだ。
 部屋の出入り口は後で検討する。また、PSなどの竪穴は、部屋割りの最後でよいだろう。
 部屋割りが完了したら、次に内装を描く。つまり家具の配置や、造作物を描く。残っているのは表記と外構回りである。
 通常はこの後に梁伏図と断面を描く。この二つの図面はプランニングの要素が少ないので、機械的に描くことができる。
 以上で平面図はほぼ完成する。
 実は、まだプランニングから完成図面まで通して描いた事はない。しかし、この段階でおおよその手順を考え文章にしておく事で、それまでは漠然としていた手順がより明確になった気がする。皆さんにも、製図の手順を自分なりの言葉にしてみる事はおすすめである。
 
2.道具の使い方
 こと製図に関しては、弘法筆を選ぶ、である。品質と効率はトレードオフなのだ。製図スピードの向上は、現実的にはいかに手を抜くかにかかっている。しかし、手を抜くにも限度があるだろう。だから、道具で改善できるところは道具に頼らざるを得ない。
 
〓 シャープペン
 ペンテルのGraph1000(0.5mm)を使うことにしている。軽すぎて筆圧を要するという意見もあるかもしれないが、好みの問題だろう。重めのUni-SHIFT(0.4mm)も使っているが、ペンの重さが筆圧に影響するとは思えない。ちなみに、Uni-SHIFTはペン先のロッドの部分がスライドして引っ込む機構を持っている。携帯時にロッドを保護することができるのだが、この機構はそれほど役に立たないと思う。ただし、メカ好きにとっては若干魅了される部分もあるかもしれない。
 
〓 字消し板
 字消し板や三角スケールがあるだけで、だいぶん製図のスピードは違うものである。字消し板は部屋の出入口を作図する時に多用する。最初から開口部を開けて壁面を描くよりは、通しで壁を描いてから、開口を字消し板で消した方が断然早く描ける。しかも、字消し板の穴の幅で、開口幅を割り付けることができるので、いちいち寸法を当たる必要がない。

 

〓 平消しゴム
 主に字消し板とともに使う。先端に鋭角な部分ができるように、少し寝かせながら使う。字消し板で細かい部分を消すときは、そのとがった部分を当てるようにする。壁の接合部の抜きを作る場合も、ある程度は使えそうだ。しかし、本来はできるだけ字消し板や消しゴムを使わないようするのが王道なのかもしれない。
 昔はSTEDLERの洗濯バサミのようなやつを使っていた。今はペンテルのCLIP-ERASERがおすすめ。
ぺんてる クリックイレーザー フォープロ ZE31-A

ぺんてる クリックイレーザー フォープロ ZE31-A

 

 

〓 三角スケール
 製図の時に必要になる縮尺は200分の1であるが、エスキースの時は400分の1で描く。この400分の1スケールがない三角スケールが結構多い。私は最初の1本目の三角スケールを購入した後にそのことに気づいた。サイズについては先輩から30㎝のものが必要と言われたが、基本グリッドが用紙にあるので、細かいポイントを当たるだけである。そのため15㎝のもでも十分間に合う。30cmの三スケはかえって使いづらいような気がしてならない。

  ちなみに私は、会社帰りにエスキスの練習をするため、常に三角スケールを携帯している。携帯用の三スケとしては、筆箱に入るスリムタイプがおすすめである。

アルミ三角スケール ナノ 15cm ブロンズ

アルミ三角スケール ナノ 15cm ブロンズ

 

 

〓 テンプレート+三角定規
 三角定規とテンプレートは、バンコのテンプレート付き三角定規で十分間に合っている。中央にツマミが付いているので非常に使いやすい。
 テンプレートを使う場面は、まず柱を描くときであるが、平行定規に載せてスライドさせるときに中央のつまみがあるだけで、位置合わせがしやすいのだ。テンプレートを使う場面は、トイレの便座(3.5mmの楕円)、小便器(三角の2辺)、植栽(3~10mmの円)、開き戸(9~10mmの円)、入口を示す三角や方位記号、これら殆どがバンコのテンプレート付き三角定規で賄える。
 ただ、製図試験によく出てくる多目的広場に10mの外接円を描ける図形枠が無い。そのため、通常のテンプレート以外に、10mの円が描けるテンプレートを別途購入した。
ウチダ テンプレート No.140F 建築士・受験者用定規 012-0015

ウチダ テンプレート No.140F 建築士・受験者用定規 012-0015

 

  勾配定規は必要性は薄いのだが、まれに出題される敷地が方形でない場合は、おそらく必要になるだろう。

 それと、実際に受験のときには通常の三角定規とテンプレートを予備として用意する必要がある。テンプレート付き三角定規は使用禁止になる可能性があるからだ。

 
〓 ハケ
 消しゴムを使うと、必ず刷毛が必要になる。つまり、それだけ時間を食うことになる。であるから、なるべく消しゴムは使わない方がよい。もしくは、消すべき線は一気に消して、刷毛を使う回数を減らすべきだ。その意味で、開口はできる限り一回で作図(消込)するようにしている。
 ちなみに、今使っている刷毛は、学生時代に購入した羽タイプのものだ。意外と長持ちする。
 
〓 製図板
 昔はT定規を使用していたようだが、今は平行定規である。来年度の試験に向けてこれから用意する人は、今年の製図試験の合格発表後に中古のものを購入する事をおすすめする。そもそも今どき実務で平行定規を使う人はいないだろう。私も合格後は平行定規が無用の長物となること必定なのだ。
 もし、平行定規に選択肢となる条件があるとしたら、2点だけである。一つはマグネット式かマグネットなし(ビニール)か。私はマグネットなしのものを購入して、ドラフティングテープで用紙を固定しているが、テープを剥がす時に用紙の四隅を多少損傷する以外は何の不自由も無い。もうひとつは、平行定規のロック機構である。できればワンタッチでロックできるものが良い。しかし、私が購入したのはねじ込みロック式である。ロックを使用するのは柱を描くときくらいなので、それほど支障はないが、しかし出来ればワンタッチでロックできた方が良い。
 もし、値段で選ぶなら、私が購入したコクヨの製品が良いかもしれない。それなりに堅牢な製品であり定規部分が浮いた状態になるフローティング機構は扱いやすいと思う。しかし、ロック機構などとにかく扱いやすさを重視するならMUTHOの製品が良いだろう。MUTHOの製品はロックのスイッチが平行定規部分と独立して盤面手前に装着されているので、ロックするときに不用意に位置がずれることがないようだ。

  私が購入したコクヨトレイザーは、たぶん最もシンプルな製図板。キャリーバックも同梱されているので、製図試験のために購入するにはうってつけだと思う。

 

〓 時間を計る

 製図の練習をしているときについつい忘れがちなのが、製図の開始時間と終了時間を記録することである。私は、製図用紙の最下段にある記入欄に、開始と終了の日時を書き込むようにしている。そして、タイムトライアル的にせかせかとペンを走らせることの無いように気を使っている。途中で中断しても、最終的にどれだけ時間がかかったかが分かるようにするのである。そして、これは楽観的過ぎるのかもしれないが、自然と4時間程度で図面を完成することができるようになると目論んでいるのだ。とにかく楽しみながら、製図を一つの作品と思って手を動かすことだ。