アメリカが提唱したファシリティーマネジメントとはいわゆる施設としての建築物活用をどのように最適化するかとう課題に対して答えを導き出すマネジメント手法を指す。施設管理を担当していた関係で2013年に私もこの「認定ファシリティーマネジャー資格」を取得したのであるが、民間資格であるために5年の有効期限が設定されていたりする。そこで更新が必要になり、資格更新セミナーを受講してきた。
場所は一橋にあるNII(国立情報学研究所)である。JFMAから送られて来た案内では場所が「学術総合センター内一橋大学一橋講堂中会議場」となっているが同じ場所である。もともとここに一橋大学があった名残なのだろう。あるいはNIIは国立大学協会か何かの下部組織団体なので、施設を共有しているのだろうか。
会場がNIIであることが分かり一安心した。1階のエントランスから階段を上がるとすぐに会議場があり、早速受付担当者に受講票を提出した。受講票には顔写真を貼るA票と控えのB票があり受講証明のにスタンプを押してくれる。さすがに日経新聞社が後援しているとあってなかなかしっかりした対応なのである。
講習は午後1時から5時までの4時間である。その10分前に会場に入ると300名程度の収容スペースがほぼ満席の状態であった。この講習に出席しなければFM資格が継続できない、しかも資格継続のために3万5千円ほどを払い込んでいるとあって全員出席が標準となったのだ。国家資格ではないので実務上ほとんど役には立たないのだが、せっかくとったのだから継続したという人も多そうだ。
講義の内容は、5年の間にJFMAの解説書籍が改定され追補版が新装版にインクルードされたこと、ファシリティマネジメントがISO規格に組み込まれる予定であること、ダイバーシティーや環境問題への取り組みを強化したことなどである。講習は休憩をはさんで3つに分けられ、それぞれ登壇者が2名ずつ、合計6名が登壇する。4番目の登壇者は日建設計の方である。面白い話が聞けるのかと思ったが単に早口なだけで期待外れだった。
面白い話は最後の事例紹介であった。一級建築士試験の「計画」にも出題されそうな建築事例が目白押しである。食い入るように聞いたのだが、いかんせん説明の時間は少ない。それでもそこには一般の建築とは違う視点があり時代の変化を感じ取ることができた。開発という概念でしか成り立っていなかったこれまでの建築を否定するわけではないが、すでに地球上に未開の地が消滅しつつある現代、そして自然環境の変化に対応しなければならない将来に向けて、建築分野が新たな試みを開始した一つの側面であるといえるだろう。
ほとんど期待せずに出席した講習であったが、最後の事例紹介を聞けて良かったのである。そこで、この事例紹介をここで紹介しておこうと思う。といってもJFMA賞という企画で選出されたもの限るのだ。以下のホームページで数々の事例を見ることができるので、私も暇なときに閲覧しようと思う。
戦後日本の建設は高度経済成長のさなかに古い構築物を破壊し新たに近代的な構造物を新築することが中心だった。しかし、成長経済が陰りを見せている今はリノベーションが建築の中心になりつつあるのだ。
かねてから疑問がある。それは木造住宅の耐用年数は50年という定説。おまけに鉄筋コンクリートのマンションまでもがなぜか50年たてば建て替え対象との認識が多いらしい。しかし周りを見れば古民家がリノベーションで民泊に活用されたり、マンションがコンバージョンされオフィスになっていたりする。都心で高層ビルがバンバン建ちまくるその片隅で、これまで専門家としての建築家の枠からはみ出し、一般の生活者の知恵による構造物の利活用が進んでいるのである。
実はこのような生活にひらかれた建築こそが、私が目指す一級建築士の近傍なのである。