一級建築士資格独学散歩道

一級建築士資格取得までの道のりを散文的に綴ります。

シリーズ【独学流一級建築士】その2「最低限用意したいもの」

 一般の資格試験であれば参考書と問題集があればなんとかなります。しかし、一級建築士はかなり特殊な試験であり、いろいろ準備するものが多いです。独学で一級建築士試験に臨む場合に、どんなものを揃えればよいかをざっくりとまとめてみました。
 

〓 一級建築士受験初年度の出費

 
 対象の数が多すぎて何から手を付けてよいかわからなくなることがある。そういう場合はまず分けることだ。「分ける」は「分かる」に通じる。
 さて、そこで一級建築士資格試験で準備するべきものを分けて考えてみる。まずはざっくりと分けてみた。
 
 
 
学科試験
千円
製図試験
千円
筆記具
チャコペン(0.5K×4本)
三色フリクションボールペン(2K)
4
製図版(平行定規)(20K)
シャープペンシル(1K×2本)
三角定規(5K)
テンプレート(3K)
三角ケール(2K)
32
参考書
総合参考書(4K)
個別の参考書(3K×5冊)
19
製図試験指南書(4K)
3
問題集
7年分過去問集(3K)
4
製図対策問題集(3K)
3
その他
建築法令集(3K)
模擬試験(5K×2回)
13
製図用紙(1K)
エスキス用紙(1K)
2
合計
 
40
 
40
※カッコ内は単品等の価格(千円単位)を示す
 
 最低限必要と思われる物品購入には学科試験だけで約4万円ほどかかるのである。さらに、不足する知識を補うために個別の参考書が必要にる。参考書1冊の相場は2千円から3千円でありおそらく5冊程度は必要になると思う。一方、製図試験については製図版が必須でありこれは約2万円である。製図道具や指南書も合わせると合計でやはり約4万円である。そして肝心の一級建築士試験の申込に2万円ほどかかる。
 つまり、一級建築士を受験するためには独学であったとしても初年度は少なくとも10万円程度かかるのである。そして翌年も受験となった場合は受験料や法令集、問題集、参考書の買い足しや模擬試験などもろもろで5万円かかるのである。私のように5年目に突入すると、初年度10万円、2年から5年までに5万円×4回=20万円、つまり合計30万円の出費となる。
 
〓 最初から買っておけばよかった参考書
 
 私の場合は途中で必要な参考書を買い増していったのだが、最初から購入しておけばよかったと思ったのは以下である。ここで、特に法規に関連する参考書の購入については注意がある。建築基準法関連の法規は改訂が頻繁にあり、出版年が古い書籍では対応していない場合が多い。必ず出版年を確認してから購入する。資格学校では法改正部分については積極的に情報を配信しているので、独学流には極めて不利なのである。
 それでは、科目ごとに、購入した方がよかったと思った参考書を紹介する。
 
1.構造
「構造計算のツボ」「構造設計のツボ」
 タイトルだけを見て最初これはどちらか1冊あればよいと思い「構造計算のツボ」を購入した。これは学科「構造」の最初に出題される構造計算問題への対策本となる。構造計算を理解できれば構造設計についても理解が進むであろうと考えていたのだが、そうではなかったのである。そして3年目の時「構造設計のツボ」を購入したのだ。
 「構造設計」は建築基準法と構造設計指針とに則り進める必要がある。これが一筋縄では理解しがたい。つまり、体系立てた解説本の助けが必ず必要になるのである。特に法規で出題される構造設計に関する設問は体系的理解なしには回答不可能に思える。であるから、この2冊はぜひとも揃えて必要な図書なのであった。 
一級建築士試験構造設計のツボ

一級建築士試験構造設計のツボ

 
2.ゼロから始める建築の「法規」入門
 この本は原口秀昭氏が著者である「ゼロからはじめる」シリーズの「法規」版である。この「ゼロからはじめる」シリーズはとにかく絵が豊富に使われていて直観的に理解しやすい。すべてのページに図や票が盛り込まれており文章が占めるスペースは10%~40%程度に抑えられている。
 特に工法や構造に対する理解が必要な「施工」や仕組みに関する理解が必要となる「設備」などもお薦めである。その中で「法規」は特にお薦めなのだ。なぜなら、この本の解説では建築基準法で規定されている事項の背景や制限の理由が書かれているからなのである。つまり複雑怪奇意味不明な建築基準法のなぞのを要所要所で解き明かしてくれてすっきり感を得られる読み物としても十分に耐え得る本なのであった。 
ゼロからはじめる建築の「法規」入門

ゼロからはじめる建築の「法規」入門

 
〓 独学流インターネットの活用
 
 近年になり一級建築士資格取得が独学で可能となったのは、インターネットが普及したからに他ならない。そして、もしインターネットがなかったならば、まさにこのような独学受験体験記を公開することは不可能であったと言える。それに、もしWeb検索ができなければ、試験勉強中不明な用語に出くわすたびに途方に暮れていたか、一日中図書館で過ごす羽目になっただろうと思う。
 今やインターネット上では、施工の鉄筋工事や防水工事の施工現場が動画で紹介されていて、建築施工に関する理解を早めることが可能になっている。このように、現代ではインターネット環境の進化が独学流一級建築士たちを支えているのである。
 そこで、独学流一級建築士に役立つサイトとしてどのようなものがあるのかを解説する。筆頭はやはりこの二つのサイトである。
 
1.建築士ドットコム
 初めて一級建築士を受験しようと思っている方はぜひともこのサイトを覗いてほしい。標準的な学習プランからおすすめの書籍まで一通りそろっている。そして、建築士ドットコムのメールマガジンもお薦めである。ある期間になると毎日メールが送られてきて、メールにはひとつの学科問題が掲載されているのである。自分でスマホに問題を用意しなくとも勝手に模擬問題が送られてくるので、電車の中で時間を無駄にしないために非常に助かるのである。
 
2.教育的ウラ指導
 こちらは草の根的な独学サイトである。サイトを開いているだけではなく、最近は書籍も多く出している。製図の手法が書かれている「製図試験のウラ指導」はものすごく合理的で、自然とプランニングができるように工夫されていてお薦めである。
 
 さらに、この「一級建築士資格独学散歩道」では物足らない方には、こんなサイトはいかがだろうか。これらのサイトは最近発掘したのだが、いろいろ参考になる点が多いのである。
 
3.趣味の建築
 当ブログと似た感じの散文調で書かれていて文章が読みやすい。ブログ当主は学科を一発合格したので現在は製図試験のノウハウを解説中である。
 
4.一級建築士独学メモ
 こちらのサイトは2010年に合格された方のメモ的なサイトである。全体的に過剰な装飾のない無味乾燥なサイトであるが、必要物件はほぼそろっているようにも見える。ほぼ箇条書きのレポートのような文章である。
 
〓 受験に要する時間を考える
 
 最後に、一級建築士学科試験に要する時間について解説する。時間がなければ独学流だろうと示現流だろうと一級建築士試験に合格するのは難しいのである。
 学科試験合格の必要時間については例えば、建築士ドットコムの場合は時間設計として、1日3時間を推奨している。これに基づいておおよその必要時間を集計すると次のようになる。
平日:1日1.5時間×2コマ=3時間
   ⇒3時間×20日=60時間/月
土日:1日5時間×8日=40時間/月
2月から7月の6か月×100時間=600時間
 もちろんこれは一般論であり設計事務所に就職していればもっと短い時間で済むと思うのである。
 ただ、この600時間というのは必要時間数というよりも1年間の限界時間数といったほうが良いかもしれない。平日に3時間の学習というのは一見容易に見えてそうでもない。会社帰りに喫茶店で18時から学習を開始しても21時まで学習時間として拘束されるのである。残業があればさらに1日の時間消費が増え勢い睡眠時間を削ることになる。であるから、やはり独学の場合は2年を目標として学科試験合格を目指すのが良いと思うのである。ただし、そう思って2年目に突入した後にずるずると合格できなくなる可能性もある。いやこれは小職が身をもって体験した上での全くもって説得力のない忠言なのであった。失礼いたしました「(^^)