一級建築士資格独学散歩道

一級建築士資格取得までの道のりを散文的に綴ります。

シリーズ【独学流一級建築士】その1「学習基礎力の構築」

 学習の基本はインプット。このインプットを加速することでより効率的な学習を可能にするとともに、試験問題の読解力というもっとも重要なアドバンテージを得ることができます。なぜ速読が必要なのか、そして、速読に関する習得方法を解説します。

 この回からは、独学流一級建築士というシリーズに代わる。あくまでも、散文的につづらねばならぬ。さて、このノウハウをどうやって散文にするのか。ふと、2002年ごろ「ザ・ゴール」という小説仕立てのハウツー本が流行したのを思い出したのである。そこで、このシリーズではいわゆる「ザ・ゴール」風の展開となるのであった。

 

 

〓 あらゆる物事はインプットとアウトプットの繰り返し
 
 私は2週間に1回の割合で市民プールに通い1時間ほどエクササイズを行うことにしている。自宅からプールまでは徒歩で行く。それにしても、車でスポーツジムに通い汗をかく人々の気が知れない。運動をするためにガソリンを使って移動するくらいなら、スポーツジムまで走って行ってそのまま帰ってくればよいではないか、と思ってしまう。
 閑話休題、実は、このあたりは昔から畑が多い。少し歩くとそこここで0.1haほどの畑に出くわす。キャベツ畑に近づくとキャベツの青臭い香りがしてきた。いつもプールの帰りがけに立ち寄る物置小屋のような野菜販売所に立ち寄った。ツヤツヤと光りながら台の上に並ぶ野菜を眺めながらお目当てを探す。
「枝豆はもう終わりですかね」と私は汗を拭きながら店番の夫人に聞いてみた。年に2回、6月と8月ごろが枝豆の収穫時期である。
「そうですね。今年はこの暑さでね」
 この暑さでは枝豆も出来が良くなかったらしい。枝豆はあきらめて艶のある茄子とカブを買うことにした。
「茄子と、あとはカブを、あ、それとトウモロコシも。今年はまだトウモロコシを食べてなかったんですよ。採れたてのがなかなかなくて……」
 「ああ、トウモロコシはサランラップに包んでレンジでチンすると美味しいですよ。うちはいつもそれです」
 
 茄子とカブとトウモロコシである。このような野菜直販所は東京都内では珍しいらしい。なにしろ、値段はスーパーで購入するより多少安いが、採れたての野菜はスーパーで購入する野菜の2倍以上新鮮で、3倍以上美味しいのだ。そんな美味しい野菜は、自然の大地によるアウトプットであり、その野菜を私が美味しくインプットしようというのである。
 しかし、この野菜はそのままインプットするわけではない。トウモロコシはラップに包んでチンする、茄子は浅漬けにする、カブは切って醤油をかける。新鮮な野菜は何もしなくても美味しく食する(インプットする)ことができるものだ。
 ところで、このような調理はプロセスと呼ぶのである。今回の野菜は、直販所で購入(インプット)し、調理し(プロセス)、そして食卓に出す(アウトプット)のである。それを私とその家族が美味しく食する(インプット)のであった。
 これは言ってみれば自然の摂理なのである。実は、あらゆる物事は「インプット→プロセス→アウトプット」の繰り返しであり、あらゆる物事にこれを当てはめることが可能なのだ。
 このインプットからアウトプットに至る一連の流れについては、拙ブログに10年以上前に記載しているので、そちらも参照いただけるととりわけわかりやすいかもしれない。
〓 インプット学習の重要性
 
 ではこれを学習に当てはめてみる。学習におけるインプットは文字を読むことであったり、講義を聴くことである。資格学校の在校生は講義を耳からインプットするのだが、講義を聴けない独学中の皆さんは文字を読むことがインプットになるはずだ。そこで、この文字を読むインプットの効率を上げることが知識量を効率的に増やし、試験の合格率を高めるのである。例えば単位時間当たりのインプットボリュームが1であるよりも2である受験生のほうが、2倍合格率は高まるのである(あくまでも論理値である)。
 このインプットの効率を上げる手法の一つに速読がある。速読の中にもいろいろある。フォトリーディングという方法は結構有名であるらしいのだが、これはあまりお勧めできない。速読の本をいくつか読んだ結果、最も現実的であり、そして効果的なのが「らくらく速読ナビ」という書籍に紹介されている手法である。「BTRメソッド( Basic Training for Readers)」という手法を使う。
 おそらく資格学校に通わずに独学で一級建築士資格を受験しようという考えを持つ方にはぴったりの方法なのだ。何しろお金がかからない。そして、自分が好きな時に、そして強い意志を持ってエクササイズをこなすことで、一定程度の能力を獲得できるのだ。
 エクササイズの中には、ランダムな文字列の中から特定の文字列を素早く抽出したり、文章の論理構成を素早く読み取り大小関係を特定するものなどが含まれる。これらは特に法令集を読み解く際にかなり役に立つと思われる。ほかにも、イメージ記憶を繰り返すなどのエクササイズもある。実際にこのエクササイズを一通り行うと、標準的な読字速度である1分間に800文字を超えることが可能になる。私の場合は1分間に1200文字程度まで読書スピードが速くなった。同時に前後の文脈による理解力も高まるのだ。
 
〓 速読エクササイズの負荷
 
 1セットのエクササイズに約2時間かかり全部で8セットある。つまり16時間程度で、ある程度の読字速度を獲得できるのである。しかも、人によってはこれらのエクササイズがパズルのように面白いのではないか。少なくとも私にとってはゲームのような楽しみがあった。
 ただし、これらのエクササイズを一度終えれば暫くの間効果は続くが、やがて効果は薄れていく。本来は受験勉強に着手する前に毎年行うのがよいのかもしれない。私もここ3年くらいエクササイズを行っていないので、そろそろ行う予定である。
 
〓 速読を習得すると何が変わるか
 
 速読ができるようになると、人生観が結構大きく変わるものである。というのも私がそれを経験したのであるから間違いないのである。実際、私が速読を開始したのは40歳になってからであった。それまでの人生と大きく異なるのは、とにかく日々読書を続けること、つまり読書、というものを日常の習慣とすることができるのだ。そうすると何が変わるか。それまで、月に1冊程度の本しか読んでいなかったのが、月に8~10冊の本を読めるようになる。本を多量に読むと、その知識がベースとなって、さらに読書スピードは上がる。
 仮に私の人生を、速読前と速読後に分けてみよう。年間の知識獲得量についていえば、速読前は12(年間読書量12)であり、速読力獲得後は100(年間読書量100)となる。これは人生においてとてつもない差をもたらす。日々獲得できる体系的な知識量が圧倒的に違うのだ。多くの起業家や一流と呼ばれる人々の多くは読書家であることからもうかがえることである。
 ただし、中には先天的に本を読めない、いわゆる読字障害を持つ人々もいる。彼らは特殊技能を持っているがゆえに読字障害を抱えているといわれている。例えば、読字障害を抱える建築デザイナーは建築物の立体構造を頭の中で回転させて細部のチェックをするという。片岡鶴太郎やスティーブンスピルバーグも読字障害であったといわれている。したがって、本を読めないと知識を獲得できないということではない。ただし、本から知識を獲得しようとするならば、速読を学ぶべき、ということである。
 
〓 日常と仕事に速読が要求される時代
 
 日常の通勤電車の中の風景が変わったのは2010年ころからだ。最初は一つの車両に1名か2名がiPhoneをのぞき込んでいた。それが今やほとんどの人が電車の中ではスマホをのぞき込む。ゲームをしている人もいればニュースを読んでいる人もいる。活字離れや本離れがいわれてから久しいが、実際には仕事のみならず、日常でも文字を読む機会が格段に増えているのだ。いやむしろ逆かもしれない。ニコラス・カーが「ネット・バカ」で論じたように、私たちは書物から体系的な知識を獲得する機会を、ネットから奪われているのかもしれないのだ。しかし、だからこそ書物を早く読むことが重要になるのではないか。
 媒体が紙から電子に代わっても、文章を読むというインプット作業の重要性は変わらない。だからこそ、速読に関するノウハウは試されてしかるべきである。今回紹介したBTRメソッドはおそらく皆さんの学習能力の基礎体力を高めるために大いに役立つだろう。もしこれまでに速読エクササイズを試したことのない人もある人も、一級建築士の受験に着手する前にぜひとも試してみてほしいと思う。

 

<目と脳がフル回転!> 即効マスター らくらく速読ナビ

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